Bar Bijou Étoile: Liner notes

Garden of Nature Piece

このアルバムについて


nil-Glassの6thミニアルバムになります。いつもの説明をするとnil-Glassは空華オキさんがボーカルとバイオリン、自分が作曲その他もろもろを担当してるロック、ポップユニット(ゆるふわ概念)になります。

さて、毎度恒例となった略称シリーズですが、今回は[Bar] [Bi]jou [E]toileということでバービー(Barbie)さんに略称をお願いしております!

今回も素敵なゲストの方々とご一緒させていただいてます!
もはや三人目のnil-Glassでは?な久遠真雪さんには、Tr.2,6でそれぞれバー紹介の歌詞と、少し前向きになれる歌詞を頂いてます!
悠貴さんにはTr.3で耽美でお洒落な歌詞を頂いています!
デコさんにはゲストボーカルとしてTr.3でダブルボーカルでご参加いただいてます!
千さんにはジャケットイラストを始め、デザイン全般でお力添えいただいてます!

空華オキさんの「Bar Bijou Étoile」&M3参加作品紹介ページ
https://karahanaoki.com/2023m3_autumn/
オキさんライナーノーツ:https://karahanaoki.com/bar_be_ln/
久遠真雪さんによる2024年春M3参加情報(「Bar Bijou Étoile」をご紹介いただいています):
https://mayuki-k.fanbox.cc/posts/7760623
千さんのイラスト制作話: 【M3春2024】Bar Bijou Étoile【特集】


略称シリーズ
1st:バタコさん-2nd:ジャムおじさん-3rd:アンパンマン-4th:リカちゃん-5th:ガチャピン

ジャケットはじめ随所に姿を表している謎の生物、イーサラーザというキャラクターについてちょっと説明しておきます。
4作めのリカちゃんことReincarnation of Starry-Chantに収録されているイーサラーザという曲があり、それに出てくるなんかモフモフしたキャラクターです。この時らずりさんとnil-Glassとで交換作詞作編曲を行ったのですが、らずりさんの作詞で概念が生み出され、ワンポイントイラストを担当した千さんの手により肉体を得て誕生しました。
曲では冬の間だけ少女と一緒に歩いたりして春には居なくなっていた、「イーサラーザ」としか喋らないハートフルな(?)キャラクターだったのですが、二次創作により夏場は冷凍庫に詰まってたり、バーではお客さんにつぶらな目で「おつまみちょうだい?」と訴えかけたり、棚のお酒をかってに飲んだり、と大分ふてぶてしいキャラになって帰ってきた模様です。生誕秘話はらずりさんの記事をご参照ください

それでは以下ライナーノーツをお楽しみください!

1. Bijou Étoile

今期の一曲目はnil-Glassアルバムでは初のインストです。nil-Glass作品といいながら、特にオキさんのボーカルもバイオリンも入らないので曲としてはソロ作品になります。ということで「好き勝手やってしまえー!」と、気分任せに拍子を変えながらのギターインストになりました。

今回一曲目はインストにしようか、というのは割と早い段階から決まっていたのですが、特に歌詞を考えたり歌のレコーディングを投げたり...ということがないので後々まで引っ張っても大丈夫、ということで着手は一番最後になりました。アルバムタイトルが先に決まり、じゃあバーの名前に合わせて曲名もBijou Étoileにしようか、と曲のタイトルが先に決まったにるぐらすでは珍しい曲にもなります。

タイトルが先に決まったので、大体の構成を決めてから、なんとなく宝石と星っぽい気がするソロフレーズを入れていって、出だしと締め以外ができた頃、オキさんが「イーサラーザのフレーズ入れないの?」との振りを飛ばしてきてですね...ジャケットにはたくさんイーサラーザが出てきているのに、楽曲に出てこないのもあれか?ということになって、後半はイーサラーザ原曲をもとにしたフレーズになってます。

......
後半だけ...?

...実は出だしのピアノフレーズも音程の動きをイーサラーザのABメロから引っ張ってきて、拍子とかに合わせて調整してます。リカちゃんのクロスフェードでも確認できますが、Bメロの面影が感じられるはず...
ということで、なんとこのアルバム、イーサラーザから始まるんですね。XFDでもこの曲の出だしが採用されているので、アルバムで最初に聞く部分がきっとここになるという...でも、伴奏を調整したらいい感じにバーになじみそうな雰囲気になったかと思います!

2. Drops of Turning point

二曲目は軽快なスウィングジャズナンバーです。製作的には歌ものでは一番最後になります。
今期はよりいつもの手癖から離れたアレンジをしていたのですが、この曲は一番完成のイメージを持たないまま風任せにアレンジを進めています。本当はもうちょっとマイナー長の強いイメージを持っていたのですが、とはいえ、出発点は早めのハネリズムでちょっと軽快な感じを出そうかな、というところでそれほど大きな乖離はなく、曲調も全体的に明るいけれどちょうどいい塩梅で着地したんじゃないかなと思います。

今作はいつもよりギターソロ書いて弾くの楽しかったですね。二サビ後に入るギターソロとか、一瞬だけどきっちり締めてそのあとのドラムのフィルフレーズにつなげられたかと思います(なお、ここのギターソロは最初に書いたフレーズは弾けないーーー!となって、書き直したものです。)あとはこの曲と次の曲で久々にブラス隊も入れました。特に管楽器の素養があるわけでもないので普段はあまり入れないのですが、「呼吸してないねぇ」となるのだけ気を付けてあとは雰囲気です。それっぽくかけてるといいなあ...
もともとインストの後の二曲目に据える予定だったのもあって、バーの紹介曲ということで、真雪さんに「悩みがある人が来るバーを紹介するような歌詞をお願いします」と難しい注文だったかと思いますがお願いしました。その時に既にインスト除くほかの四曲は歌詞とラフが大体出来上がっていたので資料としていろいろお渡ししていたのですが、その中に5曲目の「Bitters in love」を書くときに作った怪文書(という名のプロット)もお送りしていたのですが、こちらの設定も素敵に拾っていただきながら、アルバムの導入にぴったりな歌詞を頂けています!「今日はあなたの悩み事、寄り添える席を」と「秘密に続く入り口」が個人的に好きなフレーズです。
そして、そんな歌詞を受けて、お客を迎えるマスターさながらのオキさんの歌唱の情緒の載せ方もとても良きです!

そして、漫画のドアの横から顔を出すイーサラーザがまた出しゃばってる感じがしていいですね(笑)
真偽不明の噂ですが、あざらしは誰も見てないときにこの曲が流れ始めるとすーぐ腰を振って踊り始めるらしいです...

3. non parfait amour

3曲目はコラボ枠で、ダブルボーカルジャズです。 鈴木デコさんをボーカルでお迎えして、悠貴さんに作詞をお願いしました。

この曲は曲先で、イントロやサビ終わりに入る英詞部分のあの付点八分でアクセントつける表現から入っています。あんな感じのがやりたかった...全体はシャッフルリズムなんですが、ここも同様に跳ねてはいるとそれっぽくないな...ということで二連符を初めて使いました。
あとはBメロに五拍子での掛け合いを入れたり、ソロギターもぽろぽろ弾いたり、バイオリンも入れたりとやりたい放題した気もします。でもオキさんに弾いていただいたバイオリンが、いい感じに曲調を色っぽくしてくれたかと思います!(おかげでラフを聞いたオキさんに「これむずない???」って詰められてました笑)

大体曲のラフが仕上がったところでゲストボーカルどうしようか、となりまして、丁度戦闘曲コンピで制作ご一緒してたデコさんに「もう一曲どうでしょう???」とお願いしたのでした。
デコさんはよくアレンジ祭にも参加されてて歌唱のほか、曲制作もこなすスーパークリエイターさんですが、このしっとりお洒落な感じの曲調のイメージにもデコさんのボーカルはぴったりかと思い、打診し快諾いただきました。

作詞は、前作ガチャピンで「any madness end」の作詞をお願いした悠貴さんに、今回もお願いしたのですが、打診する際のテーマどうしようかと思って千さんに「ネタクレー」をしたところ「百合ください!」と返ってきまして、テーマは百合ということで打診しました。※決して日本酒を百合飲む歌ではないです
ダブルボーカルで掛け合いもあったりして、作詞的にも難しいテーマかと思いますが、こちらもイメージにばっちりなお洒落な歌詞をいただきまして、二連符パートの英語もイメージ通りでした。
(なお、この後にTr.5のBitters in loveの作詞をしたのですが、バー用語カクテル用語のインスパイアはこの歌詞から頂いてます)
個人的に好きなフレーズは「"オリーブは苦手"と笑う」「ステアをしても」です。

歌詞ができたところで、ボーカルはデコさんに先行でお願いして、頂いた歌唱がまた大人っぽくて艶っぽくてですね...オキさんと二人で「良すぎでは????」を連呼してました。
そして、にるぐらすはまたゲストボーカルさんに歌っていただくだけでなく、「アウトロスキャットなんですが自由に歌ってください!オキさんにも自由に歌わせていいです!」とコーラスアレンジを無茶振りお願いしたのですが、頂いたスキャットがまためちゃくちゃかっこよくてですね...最後の締めの「ha」のポルタメントとか最高でしかない...ここは自分の引き出しにないフレーズのつけ方だったので、お願いして良かったです。
そしてオキさんのボーカルもデコさんに合わせる形できっちり仕上げてきていただいて、スキャットも普段歌わないフレーズだったかと思いますが、艶っぽさを持たせながらの絶妙な塩梅だったかと思います!
そんなこんなだったので、ミックスではなるべく湿度間を出すように意識していました。

ジャケットの云う-聞くことはできないの表現もとてもいいんですよね...ミックスとXFD動画が若干並行していたんですが、その時に左右のパン振りを千さんのイラストに合わせてました。
ということで、最初から最後まで聴きどころしかない曲になったと思うので是非堪能していただけたらと思います!

4. mermaid champagne

4曲目はチルなバラードナンバーです。今作唯一の詞先曲であり、この曲がnil-Glass初の「オキさん作詞での詞先」となります。毎回オキさんの作詞は曲先で難航しているので、詞先の方がまだ文字数の自由が効いてすんなりいけるのでは?ということでこの形となりましたが、いつもよりはスムーズに書いていたかと思います。R&Bの時に千さんに「ネタクレー」して最初に出てきた「最愛の人を亡くした」というヘビー級のネタを、オキさんがアイディア思いついて引き取った形になります。

個人的に好きなフレーズは「色のないレーヴ」「現とのあわい」です。

メロディを付けるのは英語の部分以外はそれほど難航しなかったなと思います。サビ終わりの英語の部分はいまいち尺が埋まらないなーと思った結果、今のロングトーン気味なフレーズになりました。大体詞先で難航する部分は手癖になりにくいので、いい感じに化学反応が起きがちです(気に入ってる)

アレンジはテーマはチルということでなるべく静かな雰囲気になるよう心がけました。もう油断するとフィルを突っ込んでリズムの手数とか多くしたくなるんですが何とか抑えてます... 裏のバイオリンも穏やかなフレーズがかけたかなと思います。

オキさんボーカルはすごくしっくりくるというか、重たいけど重た過ぎず、しっとりした感じの色付けでものすごく雰囲気良いなあ...と。なお間奏の語りは、歌詞書いたけどメロディつけてもつけなくても、とのことだったので語りにしました。

落ち着いた雰囲気のBGMにはきっとピッタリの曲になったと思います!(テーマ重たいけど)

5. Bitters in love

5曲目はR&Bです。R&Bにしては何となく軽快になった気もしますがR&Bのつもりです。この曲はそういえば編曲を空の上でやったなあ(出張で長時間フライトだったので、ひたすらGuitar Proを触っていた)という思い出があります。作編曲についてはギターが伴奏もソロも結構いい感じにかけたんじゃないかな...と。nil-Glass曲では個人的にソロを弾いてて楽しい度は1,2を争います(その他だとジャムおじさん収録のholy white.とか)

さて、この曲は作詞もやったのですが、千さんに「ネタクレー」して出していただいた恋愛喧嘩ものをベースにしてます。最初は「海外行くんだ」「はあ???バカもう知らない!!」(その場から走り去る)みたいな展開を想像してたんですが、さすがに人の話聞かなすぎか?ちゃんとプロット描くか...ということでちょっとした怪文書を生み出してました。プロットをざっくり要約すると

恋人が海外に行く決意をして、ついていくかどうするか迷う。
考えながらさまよってたら不思議なバーを見つけて入店。
一杯目を頼んで飲みながら話を聞いてもらう。
二杯目を頼んで飲みながら、今すぐ決めなくても遠距離で様子を見て決めればいいのでは?と思う。
「話したいことがあるんだけど、逢えない?」とちょっと焦らしたい気持ちを込めてメッセージを送る。
すっきりして退店。

みたいな感じです。プロット中で出てくるカクテルはカクテル言葉からそれっぽいの探してきてて、一杯目がアキダクト(カクテル言葉:時の流れに身をまかせ)、二杯目がギムレット(長いお別れ)です。マスター強いやつばかり出してない???(なお、このあざらし、味を確かめたかったけど結局飲んでない模様)。ギムレットの別れも、今の生活or恋人の二者択一の別れということで、とくに破局することを決めたわけではないです。

というわけで個人的に好きなフレーズ(自選)は「紡いだ杏の香りは」「1 ozの会いたい気持ちに 1 drop焦らしたい心添えて」です。「ひとしずく」に1 dropをあてたのはカクテルの計量に合わせたかったからで... 曲名はリキュールのビターズを曲ラストのこのフレーズに絡めた感じです

ちなみにこのプロット、書き始めたら妙に長くなって全体で3000字くらい行ってました。そしてプロット内で仮で付けてたバーの名前は「bar Ih-saraza」です(ここでも幅を利かすイーサラーザ)。アルバムタイトル次第では店名が本当にbar Ih-sarazaになっていた可能性も...?いやいやまさか...
あと、入り口にランタン設定もこのプロットから拾っていただいてます!

ジャケットのこのページの背景の光の表現が夜の街っぽくてすごく好きです。あと午前三時に既読になるのもアイディアが最高でした!

歌はオキさん曰く「大サビが他の部分に比べて全体的に高くなって、質感が合わせにくいー」とのことでしたが、カッコよく歌い上げていただいてるので、なんとなくシックな感じの雰囲気をお楽しみいただけたらと思います。

6. Golden dawn

6曲目はボサノバナンバーです。ボサノバは作るの初めてだったので、ボサノバらしさってなんぞや??と思いながら色々聞いてました。シェイカーの音とかギターのリズムの刻み方などでそれっぽさを出せてるといいな... ちなみにこのギターは指弾きです。そういえば、ジャズ系にはフラットワウンド弦がいいとの情報を得てTr1-3, 6はセミアコにフラットワウンド弦を張って弾きました(この人、ギター歴だけはそこそこなのに全然にわか感が抜けませんね...)ソロフレーズにはトレモロサウンドを採用したりしてます。この曲もバイオリンフレーズ入れてオキさんに弾いていただいてます! 曲調としては締めに採用予定だったので、何となく明るく前向きになって終われるようなそんな穏やかな感じを目指しました。

ちなみに、終わりのドアベルの音は最初どこかバーにでも行ってサンプリングしてみようかと思ったのですが、結局それをするタイミングもなくドアベルを購入して家でレコーディングしました。今は家の玄関に着けてあります。涼しげな音色がいい感じです。

この曲の作詞は真雪さんです。リカちゃんから三作連続で締めの作詞を真雪さんにお願いしているので、もはやにるぐらすは真雪さんなしでは締まらないのでは...???ちなみに始めに頂いた歌詞で、退店後の時間が夜だったのですが、「朝帰りさせたいよね?」となりまして、朝の表現に変更をお願いしたりしていました。(素敵なフレーズをありがとうございました!) 好きなフレーズ発表あざらしですが「あの日から見つけた夢全部 まだ大切だから」と「もう少し夢見て 新しい日を迎えに行くよ」ですかね...。前向きになって帰っていくけど、バーでの時間の名残惜しさとか惜別感がすごくいいなあ...と思います!

そんな名残惜しくも前向きになれそうな歌詞に、オキさんの穏やかな歌唱がのってこのアルバムの締めに相応しいような曲に仕上がったと思います!

おわりに

さて、そんなこんなでアルバムとしては6作目になります。徐々に作品制作も手慣れてきて効率よくできるかと思いきや、新たに手をかけたくなる部分も増えて制作にかかる時間はあまり減りませんが、ご協力していただける方々も増えてより素敵な作品を作れるようになって、聴いてくださる方々もいらっしゃって本当にありがたい限りです...!
目下の目標は、作中に出てきたお酒をちゃんと飲んでコンプリートすることです...というところで筆をおきたいと思います。