リベルタス -Laidback crew, make sail!-: Liner notes

Libertas バナー

このアルバムについて


nil-Glassの7thミニアルバムになります。いつもの説明をするとnil-Glassは空華オキさんがボーカルとバイオリン、自分が作曲その他もろもろを担当してるロック、ポップユニット(ゆるふわ概念)になります。

今まで6曲構成のアルバムでしたが、今回はSNSで騒がせていただきましたがnil-Glassで6月に入籍をし、前半は引っ越しやら何やらで動き出しも遅かったので4曲構成という形になっています。 そのさなかに挙式の日取りがM3の直後に決まって新譜3ヵ月挙式2ヵ月で並行して準備を進めていました。

さて、今回の略称シリーズは、[リ]ベルタス -[La]idback [ク]ルー, [ma]ke sail!- ということでリラックマとなっております!(リベルタス、でいいのでは説はありますが...)告知後に予想にチャレンジしていただけることも増えてありがたいです!


今回も素敵なゲストの方々とご一緒させていただいてます!
久遠真雪さん:我々にるぐらすはもはや真雪さんのお力なくしてはやっていけない...今作ではTr1とTr3の作詞をお願いしております!
cataclecoさん:テクニカルで表現豊かな歌詞を書かれ、今作ではTr4で世界を音楽で揺るがす船上楽団を描く歌詞を作詞いただきました!
夕季森灯さん:Tr3でのゲストボーカルで、圧巻の歌唱力でリベルタス楽団員の出会いを表現していただいているほか、コーラスアレンジもしていただいています!
糸織貝さん:素敵なジャケットイラスト、遊び心満載なブックレットイラストと、今回の船上楽団のアイディアも糸織貝さんに出していただいております!

空華オキさんの「リベルタス」&M3参加作品紹介ページ
https://karahanaoki.com/2023m3_autumn/
オキさんライナーノーツ:https://karahanaoki.com/garden_of_NP_ln/
久遠真雪さんによる2024年秋M3参加情報(リベルタスをご紹介いただいています):
https://mayuki-k.fanbox.cc/posts/8694200

略称シリーズ
1st:バタコさん-2nd:ジャムおじさん-3rd:アンパンマン-4th:リカちゃん-5th:ガチャピン-6th:バービー
それでは以下ライナーノーツをお楽しみください!

1. ヴォヤージュ -希望の船出-

今作はかなりプロットが決まっていて、一曲目は幕開けにふさわしくなるような勇壮な楽曲となりました アルバムの中でエピック系、映画音楽系もやろうということでスタートしていました。そこでそのエピック要素をがっつし入れるとしたら1曲目かな、というところから構想を練っていきました。 といっても、エピックっぽい曲は今まで書いたことはなくて、しかもプロット的にはどう転んでも長調になる、ということでとっかかりは得にくかったです。 明るめのエピック音楽で検索をかけて、"uplifting"がどうもキーワードっぽいか?と思いながらコード進行とか音の使い方とかを研究したりしてました。 ボーカルメロディも普段は比較的細かく刻む傾向にある気がしますが、それとは正反対で長めの音を多用する形で入れていってます。

バックはエピックらしさを出すためキネマティック系のパーカッションを入れ、ギターも四本重ねるアンサンブル形式をにパート、後ろのオキさんの多重コーラスも2パート、オキさんバイオリン×2にストリングスのアンサンブル音源などなど、とてもカロリーの高い楽曲になったかと思います。イントロやコーラスで細かく刻んでいるバイオリンも、「これ、打ち込みで入れるつもりだけどもし弾けたら...」っていってオキさんに差し出したら、練習重ねてすごくいい感じに引いていただいたので感謝です!(難しいって文句は言われた)
余談ですが最近の個人的なテーマとしてダイナミクスをしっかりつける、というのがあり、普段はクラッシュシンバルとかでアクセントをつけるところ、キネマティック系のパーカッションはあまり音色の選択肢がない分(使いこなせてないだけかもしれませんが...)しっかりベロシティを調整して強弱をつけるいい訓練にもなりました。

はてさて、そんなこんなでたくさん重ねてミックスがすんなりいくはずもなく、あっちを上げればこっちが埋もれて...みたいなカオスっぷりでした。特にキネマティック音源は4曲目でもそうでしたが存在感を薄れさせないように、でもうるさくならないように...の塩梅が難しく、低音をがっつり削ったりしながら調整していました。いい感じに収まったんじゃないかと思います。

この曲の作詞は真雪さんで、楽団の陽の面にスポットライトを当てた歌詞をお願いしました。裏のコーラスにも造語での歌詞をお願いしたので二曲分くらいのカロリーはあったのではないかと思いますが、明るい陽の中で洋上を駆け抜けるような素敵な歌詞をいただきました! 間奏の造語早口パートはオキさんが見事にかっこよく歌い上げてます! ちなみに手拍子とか口笛も歌詞にあるので入れたかったのですが、ちょっと口笛は吹けないんですよね...残念ながら「ふゅー~...」みたいな音しか出ない...

なお、曲名をちょいちょい「希望の宴」と打ち間違えていました。どれだけ宴したいんだこのあざらし...

2. トキメキ à la carte

二曲目は船の上でのティータイム、ということで三拍子のワルツ曲になります。 かなり曲の雰囲気もイメージしやすく、楽器構成も比較的いつも通りだったので今回の4曲の中ではミックスも含めて一番やりやすかったです。 この曲はオキさんの詞先でしたが、曲調でテンポ感の縛りに対して特にサビは字数も詰め込むような感じだったので、メロディラインの組み立てではだいぶすんなり決まったなあという印象です。一番Aメロはフレーズに対して小節の数を調整したので、自分の中では曲先では出てこない新鮮なフレーズになったのではないかなと思います。

オキさんの歌詞は、優雅で楽しいティータイムが見事に描写されているのですが、リベルタスが世の体制に抗って自由に生きてる、というバックボーンを非常にうまく絡めている歌詞になっているので、そのことを踏まえながら見るとまた味わい深いのではないのかなあと思います。 Bメロの声の裏返し方がロックだった仮歌担当の京町セイカさん「お茶だって豪快に行っていいのよ?」

楽器隊は船上楽団ということでシンセは控えめにして、演奏面ではアコギとオキさんバイオリン、打ち込みのピアノでコード感を出しながら、その他マレットやハープなどの音源などを使って明るい優雅さを出せればな、というところでアレンジを進めています。あと、nil-Glass曲初のフェードアウト終わりです。余談ですがこの曲をケーキ入刀に使いました。最後のlu la radina...を繰り返して終わらない感じなので縁起はいいと思います??

糸織貝さんイラストで椅子に座っている白いねこのような何か、とても幸せそうに酒瓶を抱えていますね...???(果たして誰がモデルなのか...??)

3. 月を呼ぶ声 風と往く夢

三曲目は夕季森灯さんとのダブルボーカル枠になります。 月明かりの下でしっとりと歌うような曲ということで、穏やかな6/8拍子のゆっくり目テンポで、ピアノ、バイオリン、ハープと個人的に月イメージのある楽器を中心に編成していきました。

楽団員の二人のキャラクターの出会うまでと今を叙情形式で歌うというというプロット上、1番2番でそれぞれソロパート(ハモやコーラスはいますが)で出会うまでの過去の話、Cメロから合流するような流れになりました。そうした構成上のこともあって落ちサビからラスサビにかけてのクライマックス感はとても色濃く出たのではないかな、と思います。

こちらは曲先の作詞が真雪さんです。 ラストサビで夕季森さんパートの「風が」をかぶせに行くフレーズが個人的にはお気に入りなのですが、作詞お願い段階では、まだこの部分はなくて、歌詞をつけていただいてからパートで分岐と動きをつけていました。この歌詞じゃないとこのフレーズは生まれなかったんじゃないかな...と思います。一番二番の情景も素敵に描写していただいているので、いろいろ光景を想像しながら聴いていただくとまたエモいんじゃなかろうか...と思います!

バックのコーラスは当初は2パートを一本ずつでお願いしていたのですが(収録データをたくさんお願いするの、ちょっと日和っちゃうんですよね...)、最終的には各パート二本ずついただいて夕季森さんにフレーズもいろいろと調整していただいたりして、厚みのあるものに仕上がったのではないかな、と思います! そういえば今回は「もうずっとメインはお二人の歌唱表現でいいのでは??」ということで、イントロからアウトロまでずっとコーラスが入っていますね。多分初めてです。 夕季森さんとオキさんのツインボーカル、月夜の海にしずくが落ちるような透明感があって、本当に曲の世界観に引き込むような圧倒的な歌唱表現になっていると思います!

ミックスはまあいかんせんパート数も多かったのでこちらも難航はしたのですが、「コーラスのフレーズがしっかりと聞こえるように」というのは意識していました。それで最初は同じフレーズをパンで両サイドに振っていたのですが、ぼやけた感じになっちゃってたので、同じフレーズはパンを一か所にまとめたり、といったような調整をしていました。あとは適宜左右のパンを切り替えたりとか、音量バランスも各セクションで細かく調整したりとかしています。オートメーションをちょっと使うようになってきたのは成長。かなり調整を詰めたので、バランスよく綺麗に聞かせられているといいなあと思います!

4. かざなみの揺夢

四曲目は、「楽団が時代に迎合せずに自由に音楽を奏でる」といったテーマでつづられるロック曲です。 こちらはcataclecoさんの詞先でお願いしています。

イメージとしては「リンホラを少し弱めたような感じ?」ということで、こちらもテンポ感などはある程度決まっていたのですが、サビのコードをマイナー調強め(たしかⅥm-Ⅳ-Ⅴ-Ⅰ)で組んでました。「いや、カッコよさはあるけどちょっと争いみが強いか...???」などと逡巡していたところで、糸織貝さんからブックレットのイラストをいただき、「いや、やっぱりこの大団円ムード、明るいムードでカッコよく締めるならこっちだろう」ということで今の形になっています。 長調を押し出すほど目立って明るさは出ていないのですが、格好良さと明るさを同居させるよき落としどころになってればいいなと思います。 ちなみに一曲目と共通するイントロの部分は、マイナー調強めだったころに「もう少し世界観を共通させたほうがいいか?」というところで入れています。

音楽が忌むべきものとされた世界で、楽団の奏でる音楽が時には嵐のように人々の心を揺さぶっていく、というプロットでcataclecoさんにお願いしています。個人的にはところどころ「織り上げられる」「識り繋がる」などのおしゃれなフレーズを散りばめた後の、最後の「自由を愛して」というフレーズがストレートに映えてて好きです!

メロディラインの組み立てに関しては、Bメロの「思い思い」「想いあうは」の部分は対比でもないけど連なる部分があるので繰り返し表現を使ったりしていたり、サビは歌詞の文字数がきれいに繰り返しで収まっている歌詞をいただいたので、リズムのパターンは前半はきっちり8小節で収まる繰り返しのフレーズを意識しつつ、後半は少しずつパターンを崩すように構成しています。二曲目のà la carteもそうだったのですが、今回収めたい小節に対して割と文字数が詰まりがちになるところで詰めていくのがちょっとパズルみたいで楽しかったり。あと、メロディ書きながらふとメロの構成要素に共通部分があった「薄明」(ジャムおじさん2曲目)を思い出していたりしました。手癖か...

そういえば今作では唯一のギターソロですね。多少ギターのレコーディングに割く時間を軽減しようというのもありましたが、全体的にあんまり入れる雰囲気の曲が少ないのもありました。その分この一曲に関してはいい感じの速弾きオルタネイトピッキングソロを入れてわーっと楽しく弾いております。

ミックスはやっぱり難航しまして...多重コーラス、キネマティックパーカッションに通常ドラム重ね、ギターも2本重ねて2パート、ストリングス音源に冒頭とラストのバイオリンと盛りだくさんなので仕方ないですね!でも一曲目のコーラスが低かった分若干不完全燃焼感があったらしいオキさんが、バックコーラスに高めのフレーズを追加してくれたりといろいろ厚みも増して、豪華な曲に仕上がったのではないかと思います!

おわりに

今回はM3の三日後に挙式を控えていたこともあって、前日寝不足になることを避けてゆっくりライナーノーツを書かせていただきました。製作期間三か月で満足のいく完成度まで仕上げられたことには達成感もありますが、ご参加いただいた方々の助力なくしては成り立たない作品になります。作品にご参加いただいた皆様、お手に取っていただいた皆様に感謝を申し上げてライナーノーツを締めさせていただければと思います!